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俺的パエリア考

Paella。

 

日本語だと「パエリア」とか、

「パエリャ」とか、「パエージャ」とか呼ぶ。

 

どれが正解なのか自分もよく分からない。

 

 

 

お店では現在、パエリアは予約制とさせて頂いている。それを知るとお客さんによっては「なんだ、パエリア予約制かよ」と言って帰ってしまう人もいる。

「バカヤロー、うちは専門店じゃねーし、そう右から左へ直ぐに出来るわけじゃねーんだ、早く食べたきゃ向かいのピ〇ーラでVIVAパエリアでも注文しろよ」

と言いたい所をグッと我慢する。いつかパエリア専門店でも作ってやるか?店名は「パエリア万歳!」か?

 

 Paellaはスペイン東部、バレンシア州のバレンシア地方発祥の米料理だ。スペイン料理の一つでもあり、世界的にも有名だ。

 特に日本では同じ米食文化ということもあって、スペイン料理というと真っ先にPaellaを頭に浮かべる方は多いのではないだろうか?

 

だが、しかし日本の寿司のように全国津々浦々でPaellaをスペイン人が食べてるのかと言うと、そんなことは決してないようだ。多くのスペイン人にとっては主食はパン=小麦であり、決して米ではないのだ。またバレンシアの人たちにとってもPaellaは特別な料理であり、日曜日の昼間に家族が集まった時に一家の主が作って食べさせる、いわば家庭の特別料理、みたいなもので、朝昼晩Paellaを食べているわけではない。スペイン観光で夜にパエリアを食べて喜んでいるのは日本人くらいなんです、実は。

(バルバロでもパエリアは夜しか提供しておりませんナ。よそ様の悪口は言えません)

 

またPaellaと一口で言っても色々な種類が日本ではあり、一番人気は「魚介のパエリア」なんだろうと思う。

 

しかし、発祥の地であるバレンシアのPaellaは元々農夫の昼めしが由来とされ、使う食材は鶏肉、兎の肉、カタツムリにインゲン豆といった風なんである。海の食材なんかまるっきり入ってやしないのだ。

 

じゃぁ何故「魚介のパエリア」が元祖「バレンシア風パエリア」よりずば抜けて人気なのかって言うと…?

 

答えはそっちの方が美味しいから。であると炎上を恐れずに言ってしまおう。

 

魚介の旨味はもちろん、特に海老の旨味(アミノ酸、グルタミン酸、イノシン酸の三銃士!)、多分バルセロナ辺りで培ったとされる海辺のレストランで食すパエリアの豪華さ、優雅さ、華やかさが今日のパエリアのイメージを作り上げたんじゃないか?と勝手に思っている。

 

このパエリア、作った方なら知ってるとは思うけど、意外に作り方が難しいというか、面倒臭いというか、色々なレシピがあって、どういう風に作ったら一番なのか。

正解がないんですよね。本場バレンシアでも各家庭ごとで何千通りのレシピがあるはずだ、と思う。

それで良いのかもしれない。旨けりゃ良いし。

 

ただ自分はこの仕事で飯を食ってる立場上、最低限のルールやら、出来上がり具合を守らなければならないので、

齢52にして今回「全日本パエリア連盟」って所に入会した。入会金や会費などを払い、講習を受けて検定も受ける、というある意味「パエリア教」に入信したようなものだ。

でもこの会に入会した一番の理由は、年に一度行われる「国際パエリアコンクール日本代表選考大会」に参加して優勝し「日本代表に選ばれる事」なんだ。そしてスペインに行く。

 

やるならそこまでやらんと。

でもやればやるほど、知れば知るほど、その奥底の深さに困惑し、悩む事も多くなってきたのも事実。

 

Paella。一番好きな言葉の由来はpara+ellaで「For her 彼女の為に」とする説。

男が彼女の為につくる料理があるなんて嬉しいじゃないか。ここまで自分の運命を変えるかもしれない食に出会えるとは思わなかった。